里山でくらす

秋元夫妻が運営する農家民宿「イワンの里」

自然豊かな里山の古民家に移住した2組

人々の営みと自然が調和する里山のくらし。昭和の初期には、普通だったこのくらしも、時代とともに、過疎、高齢化が進み、地域コミュニティの存続が危ぶまれる集落が増えている。綾部もまた然り。そんな危機感の中、田んぼ、畑が広がる田園風景や、昔ながらの知恵や工夫がつまった丁寧なくらしを守っていこうと、綾部市はそれらの地域を「水源の里」と呼び、Iターンなどの定住人口を増やすために、古民家を斡旋したりして、集落の活性化を目指してきた。上八田地区で、農家民宿「イワンの里」を運営する秋元秀夫・宏子さん夫妻は、その先駆者だ。また、上林地区でカフェ「月星」を始めた岡村美奈江さんは、この地に移り住んだばかりの初心者。二組共に、都会暮らしから、地に足のついた根源的な生活を目指して、ここ綾部へ。笑顔でそう話す彼らの毎日は、日々輝いているようだ。

宿泊業の経験もなく、縁もゆかりもない綾部に移り住み農家民宿「イワンの里」を始めた秋元夫妻。高台にあって、新鮮な空気と柔らかい山の連なりに惹かれ、この古民家を手に入れた。「身土不二(ふに)」を目指し、手間暇はかかるが、無農薬で野菜や米を作り、来訪者に提供している。料理はご主人の担当。移住前に2年ほど飲食店を経営していた経験を活かし、身体が喜ぶマクロビ料理にも取り組んでいる。その日供された夕食は、きんぴらのお惣菜や大根餅、菊芋の煮付けなど、どれも優しい味わいだ。奥様は、接客担当なのだとか。そう話しながら、手際よく材料の下ごしらえなどをこなす。夫婦二人三脚のゆったりしたテンポの時間が流れている。

「近所の人は、皆親切で穏やかですね。現在は40軒ほどで構成されている集落ですが、村中が顔見知りで、あけっぴろげです。都会の暮らしは便利で、お金で何でも手に入るが、ストレスは溜まりますね。ここでは助け合わないと生きていけない。自然と向き合う時間も醍醐味ですが、その濃密なコミュニケーションが面白い。また、都会よりも刺激的な出会いがたくさんあるのです」と秋元さん。この日は、長女の秋元咲(さき)さんも訪ねてきて、農作業の合間に談笑の一時。

清流、上林川流域に広がる上林地区は、かつては綾部茶の栽培が盛んに行われた場所で、多数のほたるや鮎の生息地としても著名だ。四季折々のダイナミックな自然が今も息づく貴重なこの場所は、同時に美しい里山も形成する。「何か違う生き方がしたい」と思っていた岡村美奈江さんは、綾部市の定住サポートを受けて、Iターンし、この古民家を譲りうけカフェ「月星」をオープンした。親戚が近くにいるものの、地域の草刈り参加から接客まで、一人で店を切り盛り。沖縄にいた時期に、地元のおばあちゃんに教わったピーナツ豆腐を、より多くの人に食べてもらいたいと、沖縄のカフェメニューを提供している。

この窓から望む里山の風景に癒される人も多い。「1日ここに座ってのんびりしている方もいました。ここにきて安らいで、元気になって帰ってほしいですね」と岡村さんは話す。取材の間にも、ご近所のおじいちゃんやおばあちゃんが、みかんや野菜を差し入れに。ここにもまた、助け合いの精神が根づいている。

上林地区は、由良川の支流上林川にそって広がる集落で、口上林、中上林、奥上林と3地区で構成されている。現在、若い世代の移住が進み、古民家カフェや宿泊体験はもちろん、無農薬農業、醤油作り、マクロビの料理教室やワークショップなど、様々取り組みが行われて、地域全体が盛り上がっている。「月星」や上林地区のカフェには、丹波、福知山や舞鶴からもお客が訪れるという。