藤布を今に伝える

藤織りの技術を継承
芙留庵 小西暢子

古来より、稲作の豊作を祈る儀式には藤が使われてきた。天橋立にある元伊勢籠神社の葵祭は、別名を藤祭といい、豊受大神ゆかりの藤の花を飾るという。その藤の蔓から取り出した繊維で織る藤布は、万葉集にも「大君の塩焼く海人の藤衣」と歌われたように、海人族の衣服だったともいわれる。丹後の上世屋など山間部で、日常の布として織られ受け継がれてきたが、過疎高齢化による後継者不足から、徐々に姿を消しつつある。その中で、与謝野町で芙留庵を営む小西暢子さんは、全国でも唯一無二の藤布の織り手だ。

「父は上世屋のおばあさんから、藤織の技術を継承しました。山に入って藤を切り、皮をはぎ、途中いくつかの工程は外注しながら、機織りまでを手がけます。子供の頃は、よくその作業を手伝いましたね。父の病気をきっかけに、子育てもひと段落したタイミングもあって、私が次世代に藤織をつないでいこうと思いました」。と小西さん。現在は、藤布が持つ自然の布の良さを全国の人々に知ってもらおうと、精力的にモノづくりを行っている。「まだ、この世界に入って5年目。父の藤織にはまだまだ敵いませんね」。そう笑顔で話す、小西さん。工房で一人、機と真摯に向き合う姿が印象的だ。

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⒈2.木槌でたたき皮をはぎ、中皮だけにした藤は、水につけて柔らかくして灰汁で4時間炊く。それを川ですすぎ、不純物や汚れを落としたあと天日干しする。3.そうしてできた繊維を結びつないで糸にする作業は別の人が行うが、撚りをかけて、木枠に巻き取るのは小西さんのしごと。これでようやく、糸が出来上がる。

毛羽立ちが多くなるのでたて糸は糊をつけて乾燥させるが、乾きすぎると糸が切れてしまうので、常時水をスプレー。乾燥に気を使いながら、集中して織り上げる。帯を1本織るのに、3〜4日。「藤布の良さは、夏涼しく、通気性がある。また、織り上りは、ゴワゴワした感じですが、次第に柔らかく馴染んでくるのです。自然の息吹が感じられる素材」と小西さんは話す。

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⒋野趣溢れる風合いと透け感が美しい帯。生成り、椿染め、ミックスと3色の糸を使いわけながら、オーダーメイドで製作を行う。⒌帯だけでなく、若い人たちにも藤布を身近に感じてもらおうと、バッグやコースター、タペストリーなど、現代の暮らしに寄りそったインテリアや小物なども製作する。

与謝野町を代表する木、椿。小西さんは、夏の間に落ちた椿の花を拾い集め、それで糸染めを行っている。また、天気のいい日は、加悦SL広場の裏にある野田川で、炊いた藤の中皮をすすぐ事も日課とか。地域の恵みを最大限に利用した、地元に根づいたモノづくりだ。