綾部市の東部に位置する井根町の山あいに、大阪から移住した夫婦が営む農家民宿がある。農作物の収穫といった農業体験だけでなく、時には小川を飛び交うホタルを眺めたり、時には満天の星空を眺めたりと、里山ならではの風景が堪能できる静かな場所。囲炉裏での鍋料理や炉端焼きといった料理も魅力で、気さくな夫婦との交流を求めて足を運ぶリピーターも多い。
里山の風景を堪能 綾部の農家民宿「リロージ」
山と生きる
大阪から綾部へ移住した夫婦が営む宿
綾部の市街地から車で30分ほど走った場所にある農家民宿「リロージ」を営むのは、寺田広良さん、麻理さん夫妻。大阪市内で点心の専門店を経営していたが、今はのどかな里山での暮らしを楽しんでいる。
26年前、広良さんは自然石を鑑賞する「水石」の趣味を通じて綾部の人と知り合い、綾部の静けさのある雰囲気に引かれて井根町の古民家を購入。長らく大阪と綾部の2拠点生活を送っていた。
井根では仲良くしていた近所の人から「後継者がいないし、空き家になったらこの古民家を引き継いでほしい」と言われたのがきっかけで2019年に大阪から綾部へ完全に移住。翌年、元々住んでいた古民家を活用して農家民宿を開業し、あとから引き継いだ古民家ではレストランとカフェも営む。
点心に囲炉裏料理 リロージ流のおもてなし
1日1組限定の宿(1泊2食付きで1人12,000円、予約は綾部市観光ガイドで)では、手作りの小籠包や餃子、大根餅などの「ウェルカム点心」で宿泊客を出迎え、夜は囲炉裏で綾部の野菜や鹿肉、舞鶴の魚など地元の食材をふんだんに使った鍋料理や炉端焼きでもてなすのがリロージ流だ。
広良さんこだわりの出汁で仕込む鍋は絶品で、この鍋を楽しみに訪れる人も少なくない。自宅でとれるユズの果汁を合わせるなど、季節によって味わいは異なる。また、寺田さん夫婦と一緒に鍋を囲みながら語り合うことができるのもリロージの魅力の一つ。夕食のあと、広良さんは「2軒目に行こか」と蔵を改修したBARに客を誘い、酒を酌み交わしながらゆっくりとした時間を過ごしてもらうのだという。
自由に滞在を
「決まったルールはなく、お客さんに合わせて自由に滞在を楽しんでほしい」と願う広良さん。滞在中は、タケノコを掘ってメンマを作ったり、落花生を収穫して塩ゆでにしたり、大根を収穫して漬物を作ったりと季節ごとに様々な農業体験ができるほか、冒頭で紹介したホタル観賞や星空観賞などの自然体験も楽しめる。リクエストすれば五右衛門風呂の火起こし、ピザ窯の利用、まき割りに挑戦することもできる。
レストランやカフェも営業
一方、予約制(4人以上から)で営業するレストランは手作り点心のコース料理(ランチは2000円から、ディナーは3500円から)が味わえるほか、カフェではコーヒーや紅茶だけでなく、ウーロン茶やジャスミンティー、鉄観音茶といった中国茶や点心の単品料理を提供する。
自分と向き合いながら過ごす
「人を迎え入れるのが好きで、そのための準備をしている時間が心地いい」と話す麻理さん。宿は京阪神から訪れる人が多く、広良さんは「6年間ほど利用してくださっている家族連れのお客様がいるのですが、私のことを〝じぃじ〟と呼んでくれる子どもさんが成長される姿を見るのが嬉しい」と笑顔を見せる。中には様々な体験だけでなく、夫婦の日常の暮らしぶりに興味を持つ海外の学生もいたという。
自然に囲まれた生活は「体にも精神にもいい」と、しみじみ語る麻理さん。「大阪は便利だけど気忙しい。井根ではゆっくりと、自分と向き合いながら過ごすことができるのが魅力」という。
点心の講習会なども検討中
そんな麻理さんは綾部の食材を使ってニラ饅頭や餃子などを作る点心の講習会の開催を検討中で、「いろんなアイデアを形にしていくのが楽しい」と言う。一方の広良さんも「剪定の技術を磨き、もっと樹木と向き合いたい」と、やりたいことは尽きない。
終始笑顔で、お互いを思いやる姿が印象的な仲の良い夫婦が営む宿で、心も体もリフレッシュしてはいかがだろう。

