奇跡の漁場が育んだ、海の京都の松葉ガニ

海と生きる

奇跡の漁場が育んだ、海の京都の松葉ガニ

京都府の沖合い、水深250m〜400mの海底に、畑に似た軽泥の土壌がある…。
この土壌には、プランクトンや魚・貝など、カニの餌となる生物が豊富で、松葉ガニにとって絶好の生息地。「奇跡の漁場」と呼ばれる天然の環境によって、海の京都エリアの松葉ガニは高い品質を誇っています。

11月初旬のカニ漁解禁日のあと、海の京都にはカニ料理を目的に多くの観光の方が訪れます。カニ刺し、焼きガニ、カニしゃぶ、ボイルがに、カニ味噌、甲羅酒など…様々な食べ方も考案され、楽しみ方の幅も格段に広がっています。また、昔は難しかった生きたままのカニを提供する「活ガニ料理」も、漁の方法や流通の体制によって多く提供されるようになってきました。

海の京都のカニの品質の高さは、漁や流通方法の地道な改善はもちろんのこと、やはり大きな要因は「自然環境」。前述の、松葉ガニにとって理想的な海底の土壌のほか、低温で栄養に富んだ「日本海固有水」もその1つです。
京都府北部沖の松葉ガニ生息地は温度が低く、窒素やリンなどの栄養を豊富に含んだ海水があり、これが日本海固有水と呼ばれています。太平洋側の深層水は年間を通じて10℃前後なのに対し、日本海固有水は2℃前後。低温環境で育つ松葉ガニにとって、理想的な温度なのです。

身詰まりよくスタイルもいい松葉ガニ

京丹後市や舞鶴市など、海の京都エリアで提供されるカニは、身詰まりがよく、見た目の上でも脚が長くてスタイルがいいのが特徴。焼ガニなどでも、フワフワでありながらしっかり歯ごたえが感じられます。

漁港から漁場が近く、1時間半〜2時間程度で船が理想的な漁場にたどり着けるため、鮮度が高いことも特徴。また、水がにと呼ばれる脱皮したてのカニは身詰まりが悪いこともあり、獲らずに海へ帰します。
地元ではズワイガニのメスであるセコガニも大変人気ですが、カニの花形はやはり、松葉ガニと呼ばれるオスですね。その松葉ガニが美味しい理由が、実はもう1つあります。

海の京都のカニが美味しい理由は「保護区」

海の京都でカニ漁が行われる漁場の付近には、「保護区」と呼ばれる1km四方の漁礁が7箇所あります。保護区では、水深300メートルの砂地にテトラポットのような形状の石が大量に積まれているため、このエリアには漁の網をひくことはできません。実は、カニたちはこの「保護区」にて、外敵から攻撃されることなく育つのです。このことが、カニの質に大きな影響をもたらしています。

海の京都のカニ漁は、この保護区の漁礁からはみ出たカニだけを捕獲しているため、安定した漁獲量と、高い品質を維持できるのです。

このエリアではかつて、乱獲によってカニが著しく少なくなった時代がありました。200トンあった漁獲量が50トンほどに減ったことも。
その後、持続可能な漁業を実現するために保護区を作り、そのエリアから出てきたカニだけを捕獲する方式を確立したのです。このため今では、期間中150トンほどのカニが常時捕れるようになりました。

今回は、この理想的な漁場・漁法に裏付けられた2つのブランドがにと、産地ならではの新鮮なカニが食べられる市場をご紹介します。

高級ブランドがに「間人がに」

間人(たいざ)は京都府の最北端にある「丹後町」の一地区で、漁業はもちろん、立岩・屏風岩などの景勝地や、変化に富んだ地形の中に広がる海水浴場などに人々が訪れる町です。

その間人にて水揚げされる、「幻の蟹」と呼ばれるほど希少なカニとして認知されるようになった「間人がに(たいざがに)」。間人がにとして認められるカニは、身詰まりの良さなどの品質面はもちろんのこと、実は「特定の船から水揚げされたもの」という基準があります。その船は、たった5隻。

こと間人がにに関しては、間人で水揚げされたカニすべてをそう呼ぶのではなく、あくまでも信頼と実績を積んだ「船」、つまりは漁師が基準でブランドが成り立っているのです。

セリの直前に船上で一匹ずつ選別

間人を含む丹後地方では、船に水槽を積み、泳がせながら帰ってくる方法をいち早く取り入れました。まだ他地域では船でカニを泳がせることはしていなかった時代です。
なぜ船で泳がせるのか?それは鮮度の維持はもちろんのこと、漁から帰ってくる間に「泥を吐かせる」ことにポイントがあります。カニは泥の中に生息し、泥を食べるように生きています。このため、殻の中に泥が入っていることが多く、かつて、船に水槽がなかった時代には、カニを食べるとジャリジャリすることもあったとか。

5隻の船は、300〜500匹のカニを水槽で泳がせながら持ち帰った後、なんと1匹ずつ選別しながら水揚げします。数名の漁師たちがカニの大きさはもちろん、身詰まりやキズの有無などをチェックし、コンテナへ。選別を行った松葉ガニはすぐさま同じ漁港内の卸売市場に運ばれ、1時間後にはセリにかけられます。

一人の目利きが40段階以上にランク分け

卸売市場に運ばれた後、各船で最も目利きの力を持つ漁師が、再度綿密なチェックとランク分けを行います。この目利きには、当然のことながら熟練の判断力が必要になります。そのランク分けは、なんと40〜50段階という細かさ。

ランクが決まったカニは5匹をワンセットとし、パレットに敷かれた氷の上に並べられます。パレット上に並べる理由は、カニの良し悪しを判断しやすくするため。そして、カニは急激に冷やすと身を守るために自分で脚を落としてしまう習性もあるため、適度に鮮度保持ができる方法でもあります。

中でも最初に並べられる「一番ガニ」が最も大型で、約1.6kg。当然、高値がつきやすいカニですが、絶対ではなく、後ろの番手のカニのほうが高値になる場合もあります。

初セリ オス5匹38万円

並べられたカニは、5匹単位を基本としてセリにかけられていきます。2019年は最高値25万円だった間人ガニ。2020年は38万円の高値がつきました。これは「祝儀値」と呼ばれる、初セリ特有の価格ですが、それでもかなりの高価格。間人は持続可能な漁業を目指すため漁獲量も限られており、その品質の良さと相まって、平均単価が徐々に高まってきたのです。

セリ人はその年の状況や、仲買人の反応など様々な判断基準の中で価格を提示。相場を意識して安くなりすぎないよう、かといって、高騰しすぎないように配慮しながら、スピーディに落札者を決定していきます。

落札されたカニは地域内の各地に運ばれ、約5割が旅館や民宿など地元に流通。残りは全国へと発送されます。

さかなの街舞鶴の「舞鶴かに」

海の京都の北東に位置する舞鶴市も古くから魚介類が豊富な「さかなの街」。松葉ガニに関してももちろん、新鮮なカニが水揚げされてきましたが、近年、それらのカニが「舞鶴かに」と呼ばれるようになりました。やはり、高級ブランドがにです。

舞鶴でもやはり、船底に海水を入れ、生かした状態で泳がせながら持って帰る方式。持ち帰ったカニはすぐにセリにかけられ、また水槽へ。身詰まりがよいカニだけが「舞鶴がに」として認定されます。

京丹後のカニと同様舞鶴かにも、舞鶴沖20kmほどのあたりにある保護区にて、外敵からカニが守られた環境で育ったもの。保護区の仕組みは、漁獲量や品質に大きく影響しており、このことから舞鶴かにの高い品質が維持されています。

新鮮なカニをその場で。「とれとれセンター」

その舞鶴にある道の駅「舞鶴港 とれとれセンター」は、480坪という大面積の海鮮市場。鮮魚仲買人が直接出店する市場なので、リーズナブルな価格で新鮮な魚介、カニが手に入ります。

そして何と言ってもその特徴は「その場で食べられる」こと。お客様は指定した海鮮素材を目の前で調理してもらい、海鮮焼きやお刺身としてすぐに食べられます。

もちろん地元舞鶴で水揚げされた「舞鶴かに」も、かに刺し、焼きガニ、ボイルがになどお好みの料理法で食べることができます。そして、料理代が別途かかることなく、カニ代だけで食べられるのも魅力。もちろん、カニのお持ち帰りも可能です。

カニの品質維持は「水槽」

とれとれセンターの舞鶴かには、お客様に提供される直前まで生かし、鮮度を保ちながら水槽管理されています。水温は4℃以下に厳重に管理され、濾過によって水質も徹底。

よく「水槽で管理されたカニは身が痩せる」と言われます。それは事実で、1週間以上水槽で生きたカニは、徐々にやせ細っていくのです。
しかし、とれとれセンターのカニはそういったことはありません。なぜなら、入荷したカニは1週間以内には捌けるから。カニは獲れた日で水槽が分かれており、入荷したものから準にお客様に出されるので、新鮮なものしか提供されない仕組みになっているのです。

また、カニは1つの水槽に大量に入れてしまうと脚がとれてしまったりするので、分けてカゴに入れるなど傷がつかない工夫がなされています。

ボイルがにの美味しさの秘訣

「安くて、美味しかった!」という評判の、とれとれセンターのカニ。花が咲いたようになるボイルかになどは、「うわ〜!」という歓声が上がることもしばしば。この瞬間を体験したくて来られる方も多いようです。

その美味しさの秘訣は…「塩加減と茹で時間」。一見シンプルなようで、実は極めて奥が深く、各店舗の極秘事項となっています。湯がきが浅いと、時間がたつにつれて黒くなり、逆に湯がきすぎると美味しくないのです。
カニの身詰まりなどによって、お湯の味をみながら塩加減と時間を調整するその技は、極めて微妙な判断であり、熟練の技なんだとか。

とれとれセンターではできる限り、お客様からの注文を受けたあとに湯がくようにしています。直前まで水槽で生かされ、最高の状態で提供する。注文後、1時間ほど待っていただければ、湯がきたてが食べられます。
その場で食べる場合は、食べやすいようにお店のほうで捌いて出してもらえます。

この湯がきのカニは、お持ち帰りや全国発送も多く、ご自宅で食べられるのはもちろん、お世話になった方への贈り物としても大変喜ばれているそうです。

「ここで食べたほうが美味しい」

漁師も、仲買人も、魚屋も、この土地でのカニの美味しさをよく分かっています。そしてそれは、産地である「この場所」で食べたほうが美味しい、ということも。

今回ご紹介した間人でも、舞鶴港とれとれセンターでも、やはりこの場所まで来てもらって味わってもらいたい、と願っています。近年では京都縦貫道も開通し、ますますアクセスもしやすくなりました。直前まで生きていた、新鮮な活ガニを味わえるのは、やはり産地の魅力。

カニの保護区、漁の仕組みなど、新鮮なカニをお届けできる仕組みができあがっている海の京都のブランドがにを、ぜひ体験してみてください。

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