日本三景の街が愛したソウルヌードル

まちと文化

日本三景の街が愛したソウルヌードル

 そばやうどん、中華麺にパスタ。世界中の麺を好む日本人は間違いなく「麺食い」だ。日本三景に選ばれ、日本を代表する景勝地の一つである「天橋立」。そんな名勝を抱く京都・宮津の街に、市民が愛してやまない「ソウルヌードル」があるのはご存じだろうか。「宮津カレー焼きそば」。異国の食文化が絡み合い、戦後の復興期に誕生した宮津のご当地グルメに迫る。

発祥は王さんの「平和軒」

発祥は王さんの「平和軒」

 宮津カレー焼きそばの発祥は、宮津市街地にあった中華料理店の「平和軒」とされる。戦後間もなく、台湾から宮津に移り住んだ調理師の王(ワン)さんが開いた店で、昭和30年代から平成の初めまで営業していた。
 平和軒は中華そばが定番の店だったが、カレー焼きそばもまた有名だったという。中華料理をベースにしながらも、インドに由来するカレースパイスを加えた独特のスープが麺や具材に絡む人気のメニューだった。
 この国際色豊かともいえる一品は当時の市民らには珍しく、その胃袋を強烈に刺激したという。形容するなら異文化が混ざったエキゾチックな庶民の味。当時、平和軒に通った客にとっては忘れられない味だったに違いない。
 それを裏付けるように、宮津市内にはカレー焼きそばをメニューに加える店が増えていった。中華料理店を始め、定食屋や居酒屋などの店主が思い思いの味を提供。市民の胃袋を満たしていった。

デビューは10年前

デビューは10年前
宮津カレー焼きそばを提供する店主ら

 そんな宮津のカレー焼きそばが耳目を集めることになったのは約10年前。2009年、宮津商工会議所がグルメマップを作成するため地元飲食店を取材すると、カレー焼きそばを出す店が多いことに気づく。「これはまちおこしの材料になる」と考えた職員はマップの一画に特集を組み、「宮津カレー焼きそば」の名で売り出した。
 ご当地グルメとして本格的に売り出すため2011年には12の提供店を巡るスタンプラリーを企画し、専用のマップも作った。市民は古くから慣れ親しんだ味を再確認し、観光客も目を向けるようになった。
 宮津のカレー焼きそばは、自然発生したご当地グルメだ。調理方法や食材など、これといった定義を設けておらず、三者三様の味がある。チーズをからめたまろやかな味を提案する店もあれば、汁気のない〝ドライ系〟を推す店もある。

各店でこだわりの味

各店でこだわりの味
宮津カレー焼きそばのマップ

 発祥の店、平和軒はスープが多めだったと伝えられ、その味を追求する店もあった。マップには、そんな各店のこだわりとともにスープの多さを示す「ドライ&ウエット」のチャートを掲載し、食欲と好奇心をそそる内容にした。
 2015年には、この取り組みに興味を持った大手コンビニが総菜パンの開発を持ちかけた。パンは、提供店とカレー焼きそばファンの一般有志で監修。誕生した「宮津カレー焼きそばドッグ」は近畿圏のコンビニで一斉に販売され、知名度を上げるきっかけになった。
 これを機に発足した「宮津カレー焼きそば会」は、精力的に活動を開始。専用のホームページを立ち上げ、スタンプラリーも再開。達成者には各店で特典が得られる〝ゴールドカード〟も発行した。メディアへの露出が増え、知名度は徐々に高まっていった。

メニュー化のきっかけは常連客

メニュー化のきっかけは常連客

 「旅行客など〝一見さん〟の来店が増えた」と話すのは、宮津市鶴賀で3代続く「お食事処 糸仲」を営む糸井規雄さん。昼はサラリーマン、夜は市民らがのれんをくぐる定食屋で、カレー焼きそばを提供し始めたのは1990年ごろという。
 糸井さんによると、きっかけは約30年前の常連客だった。メニューに並ぶソース焼きそばにカレー粉を振ってほしいと注文され、調理して出したのが始まりという。店では「カレー味やきそば」の名で定着した。
 豚肉、キャベツ、タマネギ、ニンジンなどの野菜をカレー粉で炒め、ソースで味を整えたシンプルな一品。やや辛めでビールとの相性も良い。店主の糸井さんは「久しぶりに来店された方には『懐かしい。全然変わらない味でほっとする』と言われます。中にはカレー焼きそばしか食べない方もいらっしゃいます」。

進化系も登場

進化系も登場

 一方、宮津市浜町の道の駅飲食店「HAMAKAZE Cafe(ハマカゼカフェ)」は〝進化系〟のカレー焼きそばを提供している。具材はエビやアサリ、イカなどのシーフードたっぷりで、見た目は西欧料理のようだ。スパイシーなつゆだくタイプで、コロナ禍の前は年間2千食を提供した。
 道の駅ではこの人気メニューを土産品にし、宮津のソウルヌードルを全国各地に知ってもらおうと即席麺を商品化。手軽に調理できて味もおいしく、可愛いパッケージも相まってSNSで評判になり、今夏は約6600袋も売れた。
 緊急事態宣言の発令中は多くの飲食店が閉まっており、宮津も例外ではない。「コロナが収束したら宮津の店を巡ってカレー焼きそばを食べたい」。SNS上では即席麺を口にした人からこんなコメントが集まっている。

店と客をつなぐ即席麺

店と客をつなぐ即席麺

 即席麺がカレー焼きそばのファンを生み、コロナ禍で休業している店とのつながりを紡いでいる。即席麺を置く道の駅直売所の細見政司店長は「非常に驚いており、大変うれしい」と目を細める。
 営業を絶やさず続ける糸仲の糸井さんは、「早く元通りになってほしいと願うばかり。収束したらまた多くの人に来てもらいたい。その日まで、これからも変わらぬ味を提供し続けていきたい」と話し、きょうも調理場に立っている。

通販サイト「海の京都市場」ではこの「宮津カレー焼きそば」インスタント袋麺(4食・箱入り)を販売しています!家にいながら宮津の味を楽しんでください。

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 ホームページ(https://curryyakisoba.com/)やマップなどに掲載されている宮津カレー焼きそば会加盟店は次の通り。カッコ内は住所。緊急事態宣言中は休業している店もあり事前に確認を。酒房たむら(新浜)▽HAMAKAZE Cafe(浜町)▽カフェ・レスト絵梨奈(万年)▽お食事処 糸仲(鶴賀)▽橋立大丸 本店(文珠)▽瑞松苑(国分)▽中国料理 豚珍館(新浜)▽レストラン漁連(漁師)▽お食事処しょうぎん(文珠)

 なお、宮津市内には加盟店ではなくてもカレー味の焼きそばを提供している店もあるようだ。自分だけのソウルヌードルを探してみるのも面白い。

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