重要文化財「赤れんが」が紡ぐワーケーションと地域の交流

まちと文化

重要文化財「赤れんが」が紡ぐワーケーションと地域の交流

 2019年4月、国の重要文化財に指定されている舞鶴市北吸の舞鶴赤れんが倉庫群に新しい文化が生まれた。「Coworkation Village MAIZURU」。まだテレワークどころかテレビ会議すら一般的ではなかった2019年4月。京都府で初めて“ワーケーション”の冠を被りオープンしたこの施設は、今では舞鶴に訪れた人の仕事場として、ちょっとした息抜きの場として、そして地域の人たちとの交流や創造の場として、舞鶴に新しい風を吹かせている。

ワーケーションの意味とその魅力

 舞鶴赤れんが倉庫群にあるCoworkation Village MAIZURU(CVM)の床・壁・天井は約120年前の当時の面影がそのまま残っており、更にその重厚感と共存する上質な家具が、圧倒的な“非日常感”を演出している。今回はそんなCVMの魅力や、CVMを中心に舞鶴で何が起ころうとしているのかを紹介したい。

 Workation(ワーケーション)とは、Work(働く)+Vacation(休暇)からとった造語で、テレワークが浸透する昨今、新しい働き方として注目されている。普段のオフィスでも、自宅でも、近くのカフェでもない、いつもの生活圏とは少し離れたところで仕事をすることを総じてワーケーションと呼ぶ。
 ワーケーションの魅力は様々あるが、CVMのワーケーションのメリットは大きく3つある。

―ストレスマネジメント
 コロナ禍を経て、生産性向上の在り方がタイムマネジメントだけではなく、ストレスマネジメントにも矛先が向きつつある。現代社会は過度の緊張を強いられた状態で働くことが多く、テレワークやワーケーションによる適度な緊張と緩和の環境づくりが、働きやすさの向上やベストパフォーマンスの発揮につながってくる。これが整っている企業は優秀な人材確保にも一役買っているという。
 
―クリエイティブな思考を育てる
 「煮詰まった時は環境を変えると進みやすい」というのは誰もが経験するところ。場所、時間の流れ、風景をいつもと変えることで、今までなかった視点や発想を生み出すことができる。実際にCVMにワーケーションへ来たほとんどの人が、「来てよかった」と評価している。

―地域住民との出会いと交流
 そして一番注目されているのが、地域住民との出会いと交流。今まで接点のなかった、地方に住む人との新しい出会いと交流が価値観を大きく広げ、現代の社会の流れや課題に合う、ベストパフォーマンスの更に先の世界をワーケーションで得ることができる。CVMは地域の交流拠点として、ここに力を入れている。

利用者の声

利用者の声

 木下進人さんは舞鶴出身。現在は一旦帰郷し、舞鶴市内でWEBを介したトレーニングプログラムの作成や指導、スポーツチームのトレーニング計画のコンサルティングを行っている。「CVMは雰囲気が抜群に良く、家では煮詰まってしまうので、最近はほぼ毎日来てますね。なにより通信や働く環境が隅々まで行き届いていて、とても快適に利用させていただいてます。CVMのつながりで、舞鶴の暮らしとスポーツのつながりを考える“舞鶴スポーツ会議”や、これは個人的な趣味もありますが“サウナプロジェクト”なんかにも参加させていただき、久しぶりに舞鶴に戻ってきましたが、地域の可能性を感じながら、楽しく仕事をしています」と話す。

キーは地域発のコミュニティーとイベント

キーは地域発のコミュニティーとイベント
しろう塾では舞鶴ボードゲーム「キャッチ・キャッチ」の開発を進めている

 舞鶴市は「SDGs未来都市」、更には全国のモデルとなり得る10自治体に与えられる「SDGsモデル事業」に2019年に内閣府から選定された。SDGsの発信拠点としての機能も担うCVMでは、地域の持続可能性や若者の育成にも力を入れている。

 地域をよくしたいと願う有志から結成された、若手まちあそびチーム「しろう塾」、SDGsの具体的な体現を目指した「Maizuru Bamboo Monsters」、舞鶴の暮らしとスポーツを協議する「舞鶴スポーツ会議」、もったいないを合言葉にアップサイクルのバザールを開く「ほかさんフェス」、市内事業者と市外の副業企業人が連携して舞鶴の資源を開発する「まいづるワークキャンプ」(舞鶴まちづくりチームKOKIN主催)など、様々なコミュニティーや取り組みがCVMで誕生・活動し、舞鶴の住民らが、それぞれの好きや得意を活かしながら、持続可能な地域を目指している。

大学や企業との連携も

大学や企業との連携も
電気工作教室の様子

 他にも、京都大学舞鶴水産実験所と連携した「おさかな教室」や日立造船㈱舞鶴工場と連携した「電気工作教室」、日新電機㈱と連携した「エコ発電教室」などを開催。小・中学校のプログラミング教育が必修になったことを踏まえて、舞鶴工業高等専門学校が市と共催で「舞鶴高専杯プログラミングコンテスト」も実施し、更には京都府立大学の「まいづる赤れんがオフィス」が開設されるなど、老若男女の垣根を超えた、地域が主役となる連携がCVMを中心に広がっている。

CVMが目指すのは地域の「共創HUB」

CVMが目指すのは地域の「共創HUB」
越境ECを舞鶴でできないか、市外の副業人材の人とセッション

 CVMには観光やリラックスを提供できる態勢も整っているが、やはりワーケーションの醍醐味は地元の人との出会いと交流である。舞鶴に住む人が自ら考えて行動していく中で地域の魅力は洗練されていく。その魅力があるからこそ、本当に舞鶴のためになる深く継続的な関係人口の創出が生まれてくる。
 本当に大切なのは、ベースを地元で作り、それに共鳴したワーケーション人材が地元に刺激や知見を与え、更により良いものが生まれていくという循環。舞鶴にある種を発掘し、市外の方との関わりをつくり、つなげて花を咲かせて、またそれが種になるという循環をCVMから生み出しいくことだ。その役割は関係者の間で“共創HUB”と呼ばれ、CVMは市外に向けた舞鶴コンシェルジュとしての機能をより一層強化していきたいという。関係者らは「ワーケーションや地域とのつながり、地方での新しいビジネスに興味があれば、まずはCVMにお問い合わせください。一緒に面白いことをしましょう!」と呼び掛けている。

CMVの概要

■舞鶴赤れんがパーク3号棟2Fにある有料のコワーケーションスペース
■料金
3時間以内:市内の方330円、市外の方550円
1日利用:市内の方550円、市外の方1,100円
1ヵ月利用:市内の方3,300円、市外の方5,500円
1年利用:市内の方11,000円、市外の方33,000円
※2022年4月1日より、学生は上記金額の半額
■営業時間:9:00~17:00 ※事前の申請により22時まで使用可能
■休館日:年末年始のみ
■環境:安定したWi-Fi環境、徹底した音や光の管理により快適な作業環境を提供
■貸出備品:モニター、ホワイトボード、プロジェクター、WEBカメラ、スピーカーフォン、ウォーターサーバーなど利用者は全て無料
■問い合わせ
TEL:080-7436-3955
MAIL:coworkation1691@gmial.com
HP:https://www.coworkation-village-maizuru.com/

この記事は、一般の方からの募集記事として寄稿いただいたものを掲載しています。

Share

カテゴリ一覧に戻る