紅葉と自然に包まれて・こころのふるさと大江山

旅とトレイル

紅葉と自然に包まれて・こころのふるさと大江山

豊かな自然に心を癒し、日本の原風景にほっと一息。日常生活を忘れ、家族との時間を大切にできる場所を求めて、夫と息子と一緒に大江山を訪ねました。

京都府北部に位置する大江山は4つの市町にまたがる連峰。2007年8月3日には丹後天橋立大江山国定公園にも指定され、雲海の名所としても知られています。
大江山までは車で京都駅から2時間、大阪駅からは2時間半。電車であれば、最寄りの大江駅まで特急が走っています。
百人一首にも読まれた大江山で、秋の絶景と地域の方々の温かさを家族みんなで感じてきました。

山頂にて鬼の留守を訪ねる

山頂にて鬼の留守を訪ねる
大江山のふもとではさまざまな鬼が出迎えてくれます。

大江山は鬼伝説でも有名な地で、各所でユニークな鬼が出迎えてくれます。
鬼伝説は、地域でもさまざまな言い伝えが残っており、山の各所にも「鬼の足跡」や鬼退治に行った源頼光が腰掛けたとされる岩など、鬼にちなんだ名所があります。

連峰である大江山山頂のひとつ。風が気持ち良かったです。

大江山は連峰であり頂上までの道のりは、初心者向けから上級者向けのルートまでさまざまですが、今回私たちは子連れのため、複数ある山頂の中から車で気軽に登ることのできるルートを選択しました。
ふもとからは車で20分ほど。山頂から見える景色にスーッと深呼吸。山並みに映る雲の影が、標高の高さを感じさせます。
息子は広場でひと遊び。目をキラキラさせて、雲の上に乗ってお散歩しているかのように、叫びながら楽しんでいました。

山頂から10分ほど下ると、「鬼の岩屋」があります。「鬼の岩屋」とは、鬼が残したと言われるいくつもの痕跡の総称のこと。
そのうちの1つ、「鬼の岩窟」と呼ばれる小さな洞窟に入ってみると、ほんの小さな居住スペースが。雨水も滴り少し怪しげでしたが、せっかくなので入ってみました。
「鬼さ~ん!お留守の間に少しお邪魔します!」

鬼の岩窟。大人がかがんで入れる大きさです。

秋の山道を越えて新童子橋へ

秋の山道を越えて新童子橋へ
新童子橋を眺めながらほっと一息。

大江山に来たら是非とも訪れたかった場所の一つが「新童子橋」。日本では数少ない木製の吊り橋です。
近くの駐車場に車を停め、橋までは歩いて5分ほど。その山道でも秋を感じることができました。

歩くと大きな岩が連なった「強羅(ごうら)」が目に入ります。もこもこと色鮮やかな苔の岩が折り重なり、疲れた心がふんわり包まれるようでした。

川沿いから見上げる新童子橋。川の音を聞きながらゆっくりできます。

橋を渡ってみると、ぐわんと全身で揺れを感じ、抱っこしていた息子の手にも力が入ったのが伝わりました。
恐る恐る下を見てみると、岩の合間から川の流れに乗って下っていく紅い落ち葉が見えます。

目の前の色とりどりな景色に心躍ります。

橋の入り口まで来ると、目の前に秋色豊かな山々が。さらに、橋の中心まで渡って一面を見渡すと、少し早く色付いた葉とまだ黄色く緑が残っている木々に目を奪われました。
まるで緑の山に色とりどりの和紙が散りばめられたかのようで、秋の到来と日本の豊かな季節を感じました。

神々の地、元伊勢へ

神々の地、元伊勢へ
皇大神社の周りには大木が生い茂り、神聖な場所であることを感じました。

大江山から新童子橋へ下り、そこから車で5分ほど下ると皇大神社(こうたいじんじゃ)があります。
皇大神社は同じく福知山市大江町内にある豊受大神社(とゆけだいじんじゃ)、天岩戸神社(あまのいわとじんじゃ)と並んで「元伊勢三社」と呼ばれています。
元伊勢とは、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が伊勢へ行くまでに、一時的に祀られたという伝承を持つ神社のことをいいます。
また皇大神社の奥にある天岩戸神社は、その昔、天照皇大神がお隠れになったという伝説の地。今もパワースポットとして、福知山市の代表的な観光地となっています。

駐車場から皇大神社までは、少し階段を登ります。
杖の用意もあるので、体力に不安がある人でも安心です。
体力自慢の夫も10キロの息子を担いで登ると額に汗をかいていました。
階段を登った先には、天然林で囲まれたお社があります。周りにはシイの大木が茂り、太古の昔からこの地を神々の地として地域の方々が大切に維持されて来たことが伝わってきます。
皇大神社から天岩戸神社までの道のりはゆるやかな下り坂。周りの自然に目を癒し、約10分歩くと川に降りる階段があり、その先には崖にそびえ建つ天岩戸神社があります。

天岩戸神社へは鎖があるので登ってみてください。

目に映るその景色に息をのみ、神々が降りてきたという神話の一部に入ってしまったかのような感覚に。
湧き出る水と川の流れに耳を傾けながら、神秘的な時間を過ごせる場所でした。

日本の原風景、毛原

日本の原風景、毛原
展望台からの景色。深呼吸して、毛原の自然を感じました。

山を下った後は、ふもとに位置する毛原地区を訪れました。
丹後と丹波の境にある毛原は「日本の棚田百選」に認定された地域で、現在は600面の棚田を26名の住民の方が現存と存続のために尽力されています。
棚田の稲作だけでは生計を立てて行くのは難しいため、休日のみ毛原に帰ってくる方もいらっしゃるそう。
地域の方々が懸命に守られている日本の原風景は、そこに立っているだけで温かく、日本に生まれたことを幸せに感じることができました。
今回は地域振興の活動の一環として、定期的に開催されている「縁側カフェ」にお邪魔してきました。

お客様とお話しする水口さんと櫻井さん。とても和やかな空気が流れていました。

オープンと同時に訪問すると、家主の櫻井さんと地域の取りまとめ役をされている水口さんが温かく迎えてくれました。
見渡す限り田畑が広がり、静かな時間が流れていて、まるで日本昔話の中に入ってしまったかのよう。ワンコインでお茶とお菓子をいただくことができ、お菓子の豆菓子も地域の方々が食品加工所で作られたものです。
少ししてやってきた常連のお客様は、まるで久々の我が家に帰ってきたような笑顔。水口さんたちが、おかえりと心からお出迎えされている姿にほっこり癒されました。

ゆっくりとした時間を過ごしたあとは、おすすめの展望台へ。村の一番奥に位置する展望台からは、色鮮やかな山並みの中に棚田を中心とした集落を見渡すことができます。山道は少し険しいですが、その疲れが吹き飛ぶような絶景が広がっていました。
展望台への行き方は住民の方に聞くと、皆さんとても親切に教えてくれました。

【縁側喫茶】
営業日:第1日曜日、第3日曜日
営業時間:10:00~16:00
所在地:毛原地域内で毎月変更されます。

毛原の棚田

みんなの故郷、大江山

みんなの故郷、大江山
毛原の化粧地蔵。おしゃれしてさまざまな人々を迎え、地域を見守ります

日本昔話を思わせる景色と、ほっと包まれるあたたかさ。また来たいと思う場所。帰って来たくなる故郷。それが大江山でした。
大江山の景色と自然を残していきたいという地域の方々の想いを、訪れたそれぞれの場所で感じた今回の旅。
新童子橋と元伊勢神宮では、貴重な建造物や歴史的遺産が大切に守られており、最後に訪れた毛原では、棚田にあたたかい日が差し込む景色に優しく包み込まれる時間を過ごすことができました。
受け継がれてきた自然を大切に維持しながら、訪れた人たちを心からおもてなしする、日本人が大切にしてきたものがこの大江山には残っています。
普段の生活を忘れ、古来より脈々と受け継がれてきた自然に心と体を癒され、家族や友人と大切な時間を、ぜひ過ごされてはいかがでしょうか。

【関連記事】
大江山の鬼伝説について詳しくはこちらから!

京都・大江山に残る鬼伝説

京都・大江山に残る鬼伝説

2021.10.1

Share

カテゴリ一覧に戻る