和のこころをつなぐ vol.1

まちと文化

和のこころをつなぐ vol.1

こんにちは、海の京都DMOの文化観光サポーター、河田恵美です。海の京都エリアの伝統文化やお祭りの継承、地域文化の活性化のために活動しています。
海の京都Timesでは、主に祭礼や民俗芸能に関する記事を連載していきます。第1回目は、京都府宮津市にある上宮津(かみみやづ)のお祭りについて取材をしました。

宮津の玄関口、上宮津

宮津の玄関口、上宮津
杉山林道 茶屋ヶ成から見た宮津 (撮影:河田恵美)

日本には、日常とは違うめでたい日のことを「ハレの日」、普段の日常のことを「ケの日」と呼ぶ考え方がある。

「ハレの日」には、普段の単調な日々やつまらないこと(「ケの日」)を忘れて、みんなで祝福し、思いきり笑って楽しむことができる。このハレとケの日の組み合わせによって、バランスのよい生活を送ることができるという意味があるそうだ。

コロナ禍で2020年、2021年は地域のお祭りが中止、または神事のみ行われるケースがほとんどだった。
2021年2月〜3月、一般社団法人マツリズムが日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として、「祭に対する意識調査」を行なったところ、コロナで失われる可能性が高い日本文化1位は“祭り”、2人に1人がコロナ収束後も祭りが開催されないと回答した。

お祭りが開催できない今だからこそ、地域の取り組みや今後について考えたい。
上宮津地域のみなさんは、お祭りについてどう感じているのだろう。

夜明けから愛宕神社へ向かう屋台 (写真提供:宮本弘明様)

上宮津は、参勤交代をはじめ内陸から丹後国へ入る主要ルートの玄関口だった。江戸時代に宮津城下町ができてから、現在の宮津市街地と分けて上宮津と呼ばれるようになった。
この地域の祭礼芸能は、南太神楽(みなみだいかぐら)組、今福(いまぶく)太刀組、喜多(きた)太刀組、小香河(こかご)太刀組、四区(よんく)太刀組、奴(やっこ)組の6組で構成され、神楽、太刀振、奴は京都府登録無形民俗文化財でもある。奉納は4月の第3土曜日、日曜日。4月初め頃に「こぶし固め」という儀式を行い、練習が始まる。

祭礼本日(ほんび)の日曜日、まだ真っ暗な夜明け前の午前3時半、一番遠い今福太刀組の屋台が出発し、小田関が淵の山頂355mに座する上宮津総鎮守 愛宕(あたご)神社へ向かって提灯をつけた屋台が各地区で合流し、氏子たちは金山地区まで囃しながら引いて歩く。そこから太刀、太鼓などの祭礼道具を持って神社への細い山道を登り、午前6時に神社で神事が行われる。神楽組の練り込みからはじまり、各組の芸能を奉納する。その後、各地区の氏神へ下り、夕方までお祭りは続く。

原点は、祈り。

原点は、祈り。
愛宕神社で屋台を担ぐ神楽組(写真提供:粉川正太郎様)

上宮津の太神楽は伊勢太神楽がルーツで、江戸時代に伝えられたという。最初に芸能を奉納する神楽組は、「タンタコ」と呼ばれる荷屋台を担ぎ、練り込みではその屋台を縦にして、太鼓を打つ人が乗った屋台をグルグル回す。

その後、獅子舞が奉納される。獅子舞には『切払い、鈴の舞、乱』という3曲があり、それぞれ笛と太鼓のリズムが違う。現在、神楽に参加するのは20名。獅子は、棒のようなものを口にくわえて支えながら頭にのせるため、体力のある子どもと40代の若手が舞手の中心となる。人手不足のため、屋台の担ぎ手には70代の人も参加している。

神楽組の獅子舞 (写真提供:宮本弘明様)

神楽組の羽賀千明さん(70代)は、お祭りについてこう語る。

「若い時はただお祭りの雰囲気を楽しんでいたが、歳を取るにつれ、お祭りは神様と交流する機会であると感じている。五穀豊穣の祈り、感謝の気持ちを、芸能と共に奉納して神様に見ていただくという神事の本来の意味を忘れてはいけない」

また、お祭りは「集落の輪」をつくる場でもあるという。役者は年々減っており、放っておくと廃れるのではないかという不安がある一方で、地区のみんなと楽しい時間を過ごすお祭りは、いくつになっても毎年やりたいと願う。

形を変えても、地域をつなぐ。

今福地区では、移住者が増えているが役者はまだ少なく、女人禁制だった太鼓に初めて女子を採用した。

「最近は人も少ないので、平成時代に入り、当事者の負担を減らして実施できるよう、大先輩に意見を聞いてもらいつつ形を変えてきた」

こう語るのは、大須賀孝宏さん。

「太鼓を担いで10ヶ所の神社を巡らなければならないが、大人の負担が増すと、無理にやらされている気持ちになるので、帰りは太鼓を車で運んだり、他の地域から助っ人を呼んだりして楽しくお祭りがやれるよう工夫しています」

ーお祭りは今後どうなると思いますか?

「祭りはお盆やお正月と同じで、生まれた時から生活の一部。最近はIターン、Uターンの人が増えているが、最初は祭りの段取りや勝手がわからないため、手をさし伸べたり、丁寧に指導してあげられる中間層の存在が必須です。

祭りはそれだけで完結するものではなく、地域と密接に結びついているので、地域が育てば祭りも続くと思います。祭りは人の心。人がいれば残っていくのではないでしょうか」

喜多太刀組では、子どもが多かった1970年代頃までは、各家庭で長男のみが太刀振りの役者となることができたそうだ。現在の役者は小学生2人のみ。その父親である関野祥行さんに尋ねた。

―子供が少ないことについてどう感じますか?

「太刀振りは、1人でも子どもがいれば続けられます。地区にいる3歳の子どもが卒業する10年後までは、太鼓には年上の代役を使うなどできるため、危機感はほとんどありません。みんなお祭りを楽しんでいるので、コロナ禍で中止が続いた事でモチベーションが下がることもありません」

自身もお祭りが好きだという関野さんは、意欲的にこう語った。

休止になった芸能、奴(やっこ)

休止になった芸能、奴(やっこ)
愛宕神社での奴振り

奴振りは、宮津藩京極氏の時代の参勤交代を表現した芸能だ。鳥毛(とりげ)と呼ばれる、実際には馬の毛を使った3メートル近くある毛槍を空中で受け渡す。
峠を一つ越えた京都府福知山市大江町の元伊勢八朔(はっさく)祭でも、毛槍を使う奴振りが行われている。

小香河地区の八尋慈教さんが2008年に撮影した上宮津祭りの動画を見ると、そこには奴組が写っているが、現在は役者不足で芸能が行われなくなった。

奴組地区の区長、彦坂好幸さんは、残念そうに振り返る。

「おそらくその頃(2008年)から奴振りはやっていない。37世帯あるが、ほとんどが高齢者世帯で、体力の必要な奴ができる人数が足りなくなった。小学生の頃から毎年やってきたことだから、当日愛宕神社へ登る時、他の地区の太刀振りや太鼓を見ていると、奴がやれたらなぁと、淋しい気持ちになる」

ー今後、奴振りを復活させたいという気持ちはありますか?

「祭りは地域に根ざしたもの。この地域を守る氏神さんに感謝する日であり、神社との強い結びつきもある。地域に住み、地域を守っていく覚悟のある人にやってもらいたい」

70代以上の方は、代々地域を守ってきた歴史を大切にしたいという想いから、まずは地域に根付いてくれる人の存在が必要だと考える意見が多かった。

家族のような地域のつながり

小香河(こかご)太刀組の粉川正太郎さん、奥様の紀子さん、小学生のお子さんがいる堀未季さんにもお話を伺った。

この地区は、小学生が6人いる。他府県から移住してきた世帯もいて、堀さん自身も、自然豊かな地域に住みたいという想いから、3年前に東京から祖母の家がある上宮津に移住した。

「移住してすぐにお祭りに参加したので、地域の方の顔を覚えられた。みなさんがあたたかく迎え入れてくれたので、すぐに地域に溶け込めました」

「移住者の方も意欲的に取り組んでいただけるのがとても嬉しく、心強い存在です」と、紀子さん。

コロナ禍でお祭りが中止になっているため、笛の練習だけはしたいと、今年から月に1〜2度、若手の有志が集まっている。

堀さんは、「子どもも大人も、毎年お祭りを楽しんでいます。地区の一大イベントで、みんなが集まる機会。女の子も入れてもらって嬉しいけれど、形が変わっても昔はこうだったという話を子どもに伝えていきたい」と語る。

進学のため地域から出たが、新潟県から夜行バスに乗って、祭りに参加するために帰省する大学生もいたそうだ。地区全体が家族のような親しい関係にあるので、みんなに会うために「故郷」に戻ってくるのだ。

お祭りを通じて育つこころ

お祭りを通じて育つこころ
秋には大江山から雲海が見られる(撮影:河田恵美)

地域の様々な年代の人とコミュニケーションができるお祭り。怖いおじいちゃんがいたり、優しいおばさんがいたり、学校や家とは違う社会がそこにはある。地域の人のやさしさや厳しさに触れることで、家庭を超えて「いつでも帰りたい場所」となる、郷土への愛も育つのかもしれない。

上宮津のみなさんにお話を聞いて、地域を大切に思う気持ちがお祭りのあり方にも反映されているような気がした。

上宮津には、「上宮津21夢会議」、「上宮津地域会議」という団体が住民主体のイベントを開催したり、地域の活性化に尽力している。最近では移住者も増え、とても活気がある。宮津に来られたら、ぜひ、訪れてみてほしい。

周辺おすすめスポット

地域おこし事業をはじめ、上宮津地域内への移住相談窓口も開設予定
宮津市喜多1152
営業日:水・木 11:30 – 16:00 金・土 11:30 – 16:00 / 18:30 – 22:00

「おにぎりとおやつ」カフェ musubi

ビギナーでも安心!上宮津から近い杉山林道〜茶屋ヶ成(ちゃやがなる)からは、宮津・天橋立のパノラマ景観が見られます。

大江山ハイキング

大小さまざまな滝を併せて7段から構成される総落差72.5mを誇る名瀑「今福の滝」、日本の滝百選の一つ「金引の滝」へのアクセスは、上宮津から車で5分以内!

海の京都で感じる神秘の「滝」特集

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