元伊勢三社

原生林に潜むスピリチュアルな場所

福知山市内から、車を走らせること20分。

大江山の麓、大江町は鬼退治の伝説が根づいた町だ。

鬱蒼とした手つかずの原生林が広がり、低層の山が連なる光景は、実に幻想的で神秘に満ち溢れている。

そんな場所に、元伊勢三社がある。

元伊勢とは、現在、伊勢神宮に祀られている天照皇大神が、伊勢に祀られる前に、一時的に祀られた…との伝承を持つ神社や場所のことをいう。

食物、穀物を司る女神、豊受大神は、元々は丹後地方の祖神。古の時代、丹後には強大な王国があった。崇神天皇の時代、天照皇大神が巡行した時、真っ先に立ち寄ったのが豊受大神のもとだったという。そんなこともあってか、この地域には、豊受大神を祀る神社が多い。 お伊勢詣りに習い、まずは外宮へ。元伊勢三社の一つ、豊受大神社を訪ねてみる。案内役は大江地域観光案内倶楽部の赤松武司さんだ。

ここは、豊受大神宮(伊勢神宮外宮)の元宮である、と伝承される神社。参道の階段を上がると、鳥居がある。これは黒木鳥居といい、皮を剥がずに原木をそのまま使用した原始的な手法ものだ。ひっそりと人気のない境内。「ここで横溝正史の映画『悪霊島』が撮影されたのですよ」と赤松さん。境内の社殿は、神明造り。本殿のほか、月読宮など4所別宮があり、末社が37ある。「この船岡山は、古墳だった可能性があります」。まだ、詳細は調査されていないそうだが、船岡山の大きさからするとその規模はかなりのものとか。なんともロマンのある話だ。

次に、大江町内宮の集落にある皇大神社へ。杉の巨木に覆われた参道の階段を登ると、正面に拝殿が見える。その横には「龍灯の杉」と呼ばれる樹齢4000年!と言われる御神木が、火災や落雷にも耐えぬいた、雄々しい姿で私たちを迎えてくれた。ここの鳥居も黒木だ。本殿は神明造茅葺。本殿の左右には摂社があり、本殿をコの字に囲むように83の末社がある。この場所と伊勢神宮は、冬至の時、太陽の登るラインと一致するのだという。何とも不思議な話。そんな話を赤松さんに聞きながら、天の岩戸神社に向かった。

途中、日室ケ嶽(岩戸山)を望む場所に遥拝所がある。対面に見える美しい円錐形の岩戸山に願をかけると、一つだけ願いが叶うそうだ。地元では「一願さん」と呼ばれている。また、夏至の日には山頂に太陽が沈むのを見ることができるという。この山は古代より信仰の対象で、神が降臨したとされる禁足地だ。

別名で五十鈴川ともいう宮川の渓谷沿いに下っていくと、原生林の森に囲まれた中に、天の岩戸神社はある。社務所から急な石段を降りて、川べりにたどりつく。見上げると岩盤の上に拝殿はあり、お詣りするには鎖に掴まってよじ登らなければならない。足場は相当悪いのだが、拝殿の裏にある神楽岩は見ておきたい。神様が座って、天下ったというのだから。この地は、はるか昔、人類未踏の原生林だった。その原生林の姿は、今も変わらない。元伊勢三社の参拝が始まったのは、鎌倉時代以降という。徳川の時代になると、宮津藩が崇めたことで、より参拝が一般にも広がった。

この界隈は、自然環境保全地区にも指定されていて、380種類もの植物が自生し、中には希少なものもある。動植物、土石などをむやみに取ったり、持ち帰ったりすることはできない。また、美しい棚田などもある。古代からの伝承も相まってか、清冽な空気に貫かれた場所だ。都会の喧騒では体感できない、非日常的がここにある。